イベント:176シネマ #1「写真家マン・レイの前衛映画」

*今回は映画上映会のイベントです。写真の展示はありません。

開催概要

 gallery 176では、写真家が撮影した映像を紹介する「176シネマ」を、8月より始めます。第1回は、珍しい写真家マン・レイの映画を上映します。

 写真家マン・レイは、20世紀初頭のニューヨークの前衛芸術家で、芸術家のマルセル・デュシャンとともに、ニューヨークの〝ダダイズト〟として名をあげました。1920年代には、ダダイストたちはパリに集結します。この〝パリ・ダダ〟は、1920年代にアヴァンギャルド芸術が噴き出したパリの前衛芸術運動の芯となり、その後のシュルレアリスム運動にもつながっていきます。

 今回上映するマン・レイの作品はサイレント映画ですが、ピアノの生演奏付きとなります。プラネット・プラス・ワンを中心に、関西でサイレント映画の伴奏家として活躍する鳥飼りょう氏が、ピアノを演奏します。映画は、当時の映写速度16コマで日本語字幕をつけての上映となります。

 また、上映前に、プラネット・プラス・ワン/CO2事務局長の富岡邦彦氏から、当時の映画状況についての解説があります。

上映作品(上映時間 68分)

「理性に帰る」1923年/フランス/3分/16コマ
「エマクバキア」1923年/フランス/20分/16コマ
「ひとで~海の星~」1928年/フランス/18分/16コマ
「サイコロ城の秘密」1928年/フランス/27分/16コマ

開催日

2017年8月19日(土)

上映時間

第1回 15:00〜(17:00ごろ終了予定)/第2回 18:00〜(20:00ごろ終了予定)
*富岡氏にる解説後の上映/サイレント映画・鳥飼氏のピアノ生演奏付き

懇親会 20:00〜

料金

上映会(解説・演奏付き):事前申込 1,500円/当日 1,700円
懇親会:事前申込 500円/当日 700円

定員

各回 25名

主催

gallery 176 友長勇介、西川善康

協力

プラネット・プラス・ワン/CO2運営事務局/神戸映画資料館

申し込み方法

こちらのフォームからお申し込みください。

*上記フォームから送信ができない場合は、info@null176.photos 宛に、お名前・ご連絡先(お電話番号・メールアドレス)・参加ご希望の回(第1回、第2回、懇親会)をご連絡ください。

*料金は当日会場にてお支払いください。当日は上映時間の10分前ごろから受付・入場開始の予定です。

*お席に空きがある場合、申し込みが無くても入場いただけます。ただし、事前申し込みされた方の後からの入場となり、料金も当日料金となります(お席の空き状況は、Facebook、Twitterで告知予定です)。

≫ お申し込みフォーム

 

ダダからシュールへ 写真家マン・レイの映画

 マン・レイは、本名エマニュエル・ラドニツキー Emmanuel Rudnitsky。1890年、アメリカのペンシルベニア生まれ。1897年にニューヨーク、ブルックリンに引っ越し、高校時代より画廊に出入りし画家を目指すようになった。

 1915年、25歳でフランスの詩人と結婚。マン・レイを名乗るようになった。写真機を購入し、マルセル・デュシャンと知り合い、1921年、デュシャンと「ニューヨーク・ダダ」誌を創刊。同年7月にはパリに移り、モンパルナスに住んで写真家としての活動を中心にしてゆく。

 数ヶ月後には、フランスの歌手・モデルであるキキ(アリス・プラン)と恋に落ちる。職業的な写真家として成功をおさめ、ファッション雑誌などに写真が掲載されるようになる。またソラリゼーション(白黒反転映像)を表現技法としてはじめて取り入れた。

 1923年7月6日、ダダのグループが公演会を催す。出演は作曲家ジョルジュ・オーリック、ダリウス・ミヨー、エリック・サティ、ストラヴィンスキーら新古典主義の演奏があり、その後、ツァラの戯曲「ガスのこもる心臓」の上演とジャン・コクトーやツァラの詩の朗読も企画された。マン・レイはこの公演で上映する作品として3分の「理性に帰る」という映画作品を急遽製作した。これがマン・レイの映画への最初のアプローチであった。この作品がフランスにおける前衛映画の第一歩であった。

 こうして前衛芸術家たちの映画は、映画館で公開されるものとは〝別の映画〟として製作されることになる。フランシス・ピカビアに依頼され、マン・レイ、デュシャン、エリック・サティらが出演したルネ・クレールの監督した1924年の「幕間」は映画製作を指向するクレールの第1作となった。

 アメリカ人のカメラマンだったダドリー・マーフィが、画家のピカビアに声をかけて製作した「バレエ・メカニック」も同年のことであり、この1924年にダダは決定的に分裂し、ツァラと対立した詩人アンドレ・ブルトンが提唱した、「シュルレアリスム宣言」を発表。フロイドの心理学をベースに思想活動にまで及ぶこの運動に、ルイ・アラゴン、フィリップ・スーポー、ロベール・デスノス、ポール・エリュアール、ベンジャマン・ペレ、アントナン・アルトー、ルネ・シャール、ルネ・マグリットらとともにマン・レイも参加する。

 以後キキの出演する「ひとで~海の星~」を1928年に撮った。キキと別れた後に撮ったのが「サイコロ城の秘密」である。この作品は、ダリとブニュエルのシュルレアリスム映画の金字塔「アンダルシアの犬」と同じパトロンでありノワイユ子爵の資金から生まれた。

 

「理性に帰る」Le Retour à la Raison

1923年/フランス/3分/16コマ
監督・撮影:マン・レイ
出演:モンパルナスの〝キキ〟(アリス・プラン)

本作は、形式、視覚的構成、リズムだけで映画の純粋なエレメントにフォーカスした映画の技法を開発したアンリ・ショメットが「純粋映画/Cinéma pur」と呼んだアート・フィルムである。ダダイストの写真家だったマン・レイは、カメラを用いずに、印画紙の上に直接物を置いて感光させるフォトグラムの手法と、実写したモデルの〝キキ〟のシーンを組み合わせて完成させた。マン・レイは、その後「ひとで」や「サイコロ城の秘密」なども監督することになるが、もちろん写真家としては、今でも個展が開催される20世紀初頭の写真家である。

「エマク・バキア」Emak-Bakia

1923年/フランス/20分/16コマ
監督:マン・レイ
出演:キキ(アリス・プラン)、ジャック・リゴー

マン・レイの「理性に帰る」に続く2作目の映画。〝エマク-バキア〟とは、バスク語で「ひとりにしてくれ」の意である。「理性に帰る」が写真現像の技術を多用し、カメラを使用せず直に釘や画びょうを焼き付けたコラージュの〝絶対映画〟であったのに対して、この作品では、具体的なオブジェや女の裸体などもカメラで撮影し、編集されている。タイトルの後にすぐに〝シネ・ポエム=映画詩〟と表記される。ジャック・リゴーは、1898年パリに生まれたダダイストであり、シュルレアリストの詩人。キキは、マン・レイの愛人であり、1920年代パリの伝説のトップモデルである。

「ひとで~海の星~」L’etoile de Mer

1928年/フランス/18分/16コマ
監督・撮影:マン・レイ
詩:ロベール・デスノス
出演:キキ(アリス・プラン)、ロベール・デスノス

シャンソン歌手イヴォンヌ・ジョルジュに魅入られた詩人のロベール・デスノスが自分のキューバ旅行の送別会に現れたイヴォンヌに向って読んだ「詩」に感心したマン・レイが、その場で映画化を提案し、2か月後に完成させた映画。デスノスは、海の底のひとでと星(フランス語では〝ひとで〟は〝海の星〟の意)、酒と麻薬で生涯を終えつつあった歌手イヴオンヌへの〝失われつつあった愛〟を、デスノス自身が手に入れていた瓶の中のひとでに例えて歌った詩を原案とする。映画の中にその詩も登場する。主演は「理性に帰る」やフェルナン・レジエの「バレエ・メカニック」にも出演した1920年代パリを代表するモデルのキキ。そして詩人デスノス自身も出演した。

「サイコロ城の秘密」Les Mystéres du Château du Dé

1928年/フランス/27分/16コマ 
監督:マン・レイ、ジャック=アンドレ・ボワファール
製作:ノワイユ子爵
脚本:マン・レイ、ジャック=アンドレ・ボワファール
出演:マン・レイ、ジャック=アンドレ・ボワファール(二人の旅人)、ジョルジュ・オーリック、ボーモント伯爵、ノワイユ子爵、ノワイユ子爵夫人

フランスの田舎イエールにある人気のないサイコロ城。一方パリのカフェでゲームをしている二人が、サイコロを振って運命を決める。彼らが向かう場所は…サイコロ城。サイコロ城では、幽霊のような男女が現れ、遊んでいる。彼らもサイコロで運命を決めていた…。サイコロ城として登場するヴィラ・ノアイユは、ロベール・マレ=ステヴァンスの設計で、1923年建造されたモダニスム建築の代表的な作品の一つであった。持ち主のシャルル・ド・ノアイユ子爵は20世紀を代表する芸術家たち、ダリ、ジャコメッティ、マン・レイ、ジャン・コクトー、ルイス・ブニュエルなどが、このヴィラでバカンスを過ごし芸術作品の創作および制作活動に支援しており、その代表作はブニュエルとダリのシュルレアリスム映画の金字塔「アンダルシアの犬」であった。ノワイユ子爵夫妻もシルクのストッキングをかぶり、顔は分からない登場人物として出演している。

解説者・演奏者プロフィール

富岡 邦彦(プロデューサー/映画研究家)

脚本執筆などを経て、長編劇映画のプロデュースをはじめ、映画祭のプログラマー、海外映画祭の審査員なども担当し海外の映画祭や若手映画監督とも親交が多数。古典作品を中心に上映する上映室プラネット・プラス・ワンの代表。関西を中心に活躍する、若手映画監督の育成などにも努めて、映画製作や、映画史の講座、また俳優ワークショップ、子供映画ワークショップなど多数開催。未公開映画の字幕翻訳も担当。

シネアスト・オーガニゼーション大阪(CO2)運営事務局長。

プラネット・プラス・ワン webサイト: http://www.planetplusone.com/
CO2 webサイト: http://co2ex.org/

鳥飼 りょう(ピアノ)

サイレント映画伴奏者。ピアノ、パーカッション、トイ楽器等を演奏。

全ジャンルの映画に即興で伴奏をつけ、これまでに演奏した作品数は350を超える。映画に寄り添うその演奏は好評を博し、国内・海外の映画祭にも招聘されている。また、オーケストラへの客演やダンスとの即興演奏にも取り組むなど、多彩な活動を展開している。

2015年12月よりプラネット・プラス・ワンの長編シリーズ「映画史〜映画の樹」でのサイレント映画の全伴奏を担当。いま最も上映会で演奏する伴奏者のうちの一人。

無声映画×弁士×生演奏のユニット「深海無声團」メンバー。

webサイト: https://www.facebook.com/ryotorikai.music/
Twitter: @ryo_torikai

プレスリリース