©︎ INOUE Yusuke

展覧会概要

タイトル:「CONTAINERS」

作家名:井上 雄輔

会場

gallery 176(ギャラリー イナロク)

大阪府豊中市服部元町1-6-1/阪急宝塚線 服部天神駅(梅田から11分)下車 徒歩1分

会期

2020年8月28日(金)〜9月8日(火)

休廊日

9月2日(水)、3日(木)

開廊時間

13:00〜19:00

企画

gallery 176

開催概要

 井上雄輔さんと初めてお会いしたのは、昨年11月に gallery 176で開催された金村修さんの「voodoo doughnut」展の搬入の時でした。小松浩子さんと黙々と搬入作業を完成させていく井上さんの姿に圧倒された事を昨日のように思い出します。話をしていくうちに40歳の同い年という事が分かり、共に中堅作家として写真の世界の土台部分を支えていくべく踏ん張らなければならないという話をした事を覚えています。井上作品に触れるにつれ、物事に取り組む姿勢と熱量に狂気さえも感じるほどで、金村さんの次にその井上さんの展示を大阪で出来る事をとても嬉しく思います。

gallery 176 布垣昌邦

作品説明

 コンテナシリーズの写真は、すべて走行中のコンテナを側面から撮ったものだ。撮影地は主に東京都内。都心に張り巡らされた首都高道路を走る牽引されたコンテナを、高速シャッターで静止させて撮影する。都市の中に突如現れる巨大な箱。そんな非現実的な光景は、我々が普段意識していないだけで、日常的にありふれた、当たり前の風景である。

 現代のコンテナによる物流は1950年代にアメリカで生まれた。58個のコンテナからスタートし、規格の標準化、ベトナム戦争での特需などを経て、2018年には2億TEU(TEUはコンテナを数えるための単位。1TEU=20フィートコンテナ1個分)を超えた。コンテナが運用される以前は、商品の材料の調達から製造までの距離を短くして、運送コストを抑えることが優先させていたが、コンテナによる輸送が誕生してからは世界のどこでも安価で正確な輸送が可能になり、流通システムは大きく変化した。東京の街にも、世界中の運送会社のロゴが描かれたコンテナが日々行き来し、現代の流通を支えている。

 コンテナによる流通は合理的である。輸送元でコンテナに物資を詰め込み、封をする。木材、中古家電、小麦粉、鉄くず。コンテナは識別番号のついた規格サイズの箱として扱われ、中身の差異による手間を省き、スムーズに目的地まで運ばれる。 だが、そのコスト優先の合理性には、欠点もある。例えば、放射性物質を仕込んだ爆弾や、違法薬物が積まれたり、不法入国のために人間が潜り込むこともあるだろう(もちろん、それらのリスクは港で検査されているが)。日本では、ヒアリという危険な外来生物がコンテナによって運び込まれるという問題が話題になった。コンテナの合理性はグローバリゼーションに多大な恩恵を与えたが、国家、地域間の防衛網を素通りしてしまうリスクも孕む。コンテナは中身の見えない、ブラックボックスである。当然、撮影している私自身も、そのコンテナに何が入っているかはわからない。撮影によって写るのは、コンテナという現代社会における流通のシンボル。そして、利便性とトレードオフになっている、物流の隠蔽性や不透明さである。

 私がコンテナの撮影を始めたときは、単なる造形的な魅力に惹かれただけで、コンテナというものがどのような役割を担っているものなのかすら知らなかった。だが、制作を続けていくと、今まで見えなかったものが見えてくる。同じ場所で一日撮影していれば、何時頃に多くのコンテナが走るのかがわかる。コンテナを撮影した場所を地図に点として書き込んでいけば、それはやがて線になり、コンテナの経路が可視化できる。

 写真は、絶対的なルールを用いて撮影を続けていくと、相対的に変化していくものが写り込んでくる。私がコンテナの撮影を始めて5年ほどだが、たった数年前の写真でも、撮影当時とは背景が変わり、同じ写真は撮れない場所が生まれている。コンテナを撮っていたはずなのに、変化する都市が勝手に写り込んでくる。これは、撮影のターゲットはコンテナという「物体」だが、実際に写り込んでいるものは、街の中をコンテナが走っている「状況」あるいは「状態」だからである。

 コンテナという箱を撮影し続ける行為により、変容していく都市が写り、それを下支えする、世界を繋ぐ流通の軌跡が写る。「CONTAINERS」の写真群は、ミクロの視点からマクロな都市像を写すのである。

井上雄輔

展示構成

B0パネル、A2ブック展示

 

会期中の作家在廊予定

作家井上さんは、8月28日(金)、29日(土)、30日(日)、9月8日(火)に在廊予定です。在廊予定に変更がある場合は、Facebook、Twitterでお知らせします。

8月29日(土)の開廊時間について

8月29日(土)は、トークイベント開催のため、17:30以降はイベント参加者以外の方は入廊することが出来ません。大変申し訳ございませんが、作品を鑑賞される場合は、17:30までにお越しください。

*当日は、17:30に一旦ギャラリーをクローズし、17:50からトークイベントの受付・入場を開始します。

gallery 176の感染防止対策に関して

*ご来廊の際は、「gallery 176の感染防止対策に関して」をご一読ください。

関連イベント

トークイベント「井上作品について」

どういう過程で、今の表現に至ったのか過去の井上作品を振り返りながら、井上雄輔さんの gallery 176での展示を考察していきます。

開催日時

2020年8月29日(土) 18:00〜19:00

*トークイベントは通常通りの開催を予定しています。

出席者

井上雄輔(写真家)、布垣昌邦(gallery 176 運営メンバー)

料金

500円、要予約

*新型コロナウイルス感染症対策の為、お釣りが要らないよう、ご協力お願いします。

定員

10名

申し込み方法

お名前、参加人数、ご連絡先電話番号を記入の上、件名を「井上展トーク申込み」とし、info@null176.photos までメールにてお申し込みください。

定員になり次第、 締め切りとさせていただきます(料金は当日会場にてお支払いください/当日は17:50からイベントの受付・入場を開始します)。

*定員に達したため、申し込みを締め切りました。

 

*トークイベント「井上作品について」|井上雄輔写真展関連イベント は、以下のURLにてYouTubeのライブ配信を行いました。アーカイブを残していますので、ぜひご覧ください ≫ https://youtu.be/GyDj2OK8DAc

トークイベントは定員に達したため、当日ご参加いただけない方は、ぜひライブ配信をご覧ください。また、参加申し込みいただいた方で、当日体調不良等で参加が困難となった場合は、当日キャンセルしていただいても構いません(なるべくメール等でご連絡ください)。

なお、YouTubeのライブ配信はチャットの書き込みを受け付けますが、トーク開催中はチャットを確認することが難しく、ライブ配信中にコメントにお答えすることができません(終了後、井上さんにチャットを見ていただく予定です)。

*今回のトークイベントは、gallery 176での初めてのライブ配信となります。そのため、途中、映像や音声が乱れる場合があるかもしれませんが、ご了承ください。

 

布垣 昌邦(ぬのがき まさくに)

略歴
1979年 兵庫県尼崎生まれ
2002年 近畿大学法学部経営法学科中退
2004年 ビジュアルアーツ写真学科夜間部卒業

個展・グループ展
2005年「その先にあるもの」千スペース.大阪
2006年「洛中洛外観察日記」千スペース.大阪
2007年「洛中洛外物情記」スペースaura.京都
2007年「洛中洛外観察日記」コニカミノルタ.新宿
2008年「洛中洛外観察日記.其の壱」gallery 176
2012年「生と志」How are you photography展.マロニエ.京都
2014年「noah」ギャラリー10:06
2015年「route_31」How are you photography展.同時代.京都
2016年「176reborn」gallery 176
2017年「青の時代」gallery 176
2018年「洛中洛外観察日記 其の弐」 トーテムポールギャラリー新宿
2019年「洛中洛外観察日記 其の弐」gallery 176
 8月「1839當代藝廊 × gallery 176 交流展 in Taipei」
 11月 金村修展「Voodoo Doughnut」 (金村修×勝又公仁彦トークイベント) : 担当

受賞
2007年 コニカミノルタフォトプレミオ受賞

プロフィール

井上 雄輔(いのうえ ゆうすけ)

1980年神奈川県生まれ。2017年、東京綜合写真専門学校卒業。金村修ワークショップ受講。
2016年、JPS展ヤングアイ奨励賞受賞。2018年に写真集『Containers in Tokyo』(Case Publishing)を刊行し、注目を集める。個展に「Containers in Tokyo」(CASE TOKYO/東京)、「NO PARKING」(IG Photo Gallery/東京)、「CONTAINERS」(IG Photo Gallery/東京)。グループ展に「Mirage ONE 2017」(Mirage Gallery /神戸 )や「RAIEC TOKYO 2018」(72 Gallery / 東京)など。

web サイト

http://inoueyusuke.com