展覧会概要

タイトル:「KUGIRI」

出展作家名:KUAD Photography 2019 graduates

狩野明茂カルオマチコ児島貞仁児玉大輔下良隆彦高林直澄(京都造形芸術大学美術科写真コース 2019年度卒業生)

会場

gallery 176(ギャラリー イナロク)

大阪府豊中市服部元町1-6-1/阪急宝塚線 服部天神駅(梅田から11分)下車 徒歩1分

会期

2020年9月12日(土)〜9月22日(火) *通常とは会期初日の曜日が異なります

休廊日

9月14日(月)〜17日(木) *通常とは休廊日が異なります

開廊時間

13:00〜19:00(初日 9月12日(土) は15:00〜/最終日 9月22日(火) は17:00まで)

企画

gallery 176 西川善康、友長勇介

展覧会概要

 この展覧会は京都芸術大学(当時京都造形芸術大学)通信写真コース2019年度卒業生50名ほどの中から集まった有志6名による展覧会です。

 COVID-19の感染リスクにより、卒業制作展ができなくなっている写真コースの卒業生たちに対して、仕方がない事態とはいえ、教員として申し訳ない気持ちでいっぱいになっていました。卒業制作の過程で、展示や額装などの具体的なプランの提出を課題とし、実際に発注し終わって展示を待つだけだった学生も多々いたためでもあります。そのような中、東京ではIG Photo Galleryが、そして大阪ではgallery 176からお声がけいただき、それぞれに展覧会の場をもつことができました。本当にありがたいことと感謝し申し上げます。

 彼らが最初の代表作として、また小さな作家としての第一歩を刻む、重要な展覧会でもあります。人生の途上にして様々な経験や背景をもった中で写真に取り組み始めた彼らには、写真を学ぶべき、また写真で作品をなすべき理由と衝動があったはずです。そののっぴきならない念慮や思考の過程から、彼ら自身でなければならないものを引き出せればと、助言する側も苦闘を続けてきました。彼らが彼ら自身の鉱脈を探り当てたかどうか、それはまだわからないかもしれません。ただ、それを探し続ける気概と忍耐力と問題意識だけは持ち続けてくれたものと思っていますし、そのことは何よりもそれぞれの作品に現れているものと信じます。彼らの始まりの目撃者となっていただけますよう。私も楽しみにしています。

勝又公仁彦(美術家/写真家・京都芸術大学准教授)

 

 2月末からの新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で、多くの学校で卒業式や入学式が中止となりました。京都造形芸術大学(現:京都芸術大学)通信教育部芸術学部美術科写真コースでも、卒業制作展と卒業式が一旦8月に延期になり、その後、8月の卒業式はオンラインでの開催に変更、卒業制作展は開催中止となってしまいました(今後開催するかどうかは未定)。2019年度の卒業生は、準備していた卒業制作が発表できないまま半年が過ぎ、「卒業」という区切りをつけられず、次のステップに進めず立ち止まっている方も多いと聞きます。

 gallery 176でも、9月に予定していたドイツの写真家の展示が、新型コロナウイルス感染症の影響で延期となってしまい、9月前半の展示予定が無くなってしまいました。コロナ禍で空いてしまった展示空間は、同じくコロナ禍で展示場所を失ってしまった方に使ってもらおうと考え、京都造形芸術大学の卒業生にギャラリーを使っていただくことにしました。京都造形芸術大学(現:京都芸術大学)通信教育部芸術学部美術科写真コースは、私(西川)が2019年度から添削の一部をお手伝いしており、勝又公仁彦先生や2016年度卒業生の榎本八千代さんにも展示していただいた関係もあり、声を掛けた次第です。

 2019年度の卒業生の6人には、今回の展示で一旦作品制作に「区切り」をつけ、次にステップに進んで行って欲しいと思います。

西川善康(gallery 176 )

 

 令和初、そして京都造形芸術大学最後の卒業となった2019(令和元)年度卒業生である私たち。コロナ禍の中延期となった卒業式と卒業制作展。8月、再び感染者の増える中で卒業式はオンライン開催、そして卒業制作展は”8月の開催は”中止となってしまいました。延期が決まってからの約半年、時期をずらしても卒業式や展示ができる喜びと、8月本当に開催できるのかという不安の入り交じった時期を過ごした上での現状に、なかなか気持ちのけじめがつかない、やり場の無いもやもやの中で、あるはずだった区切りを付ける事が実はとても大切な意味を持つのではないかと考えました。

 幸いにしてgallery 176さんより、卒業生有志による写真展開催を提案していただき、この度6人による卒業制作を基にした写真展を開催することとなりました。展覧会のタイトルを考えるにあたり、卒業というタイミングについて考えました。卒業とはゴールであったりスタートであったり、人によってその意味や強さは様々です。そこで時間や所在を純粋に区切るということで、展覧会のタイトルを“KUGIRI”と名付けました。そして今、その区切りを付ける時がやってきました。

 こんな、私たちのKUGIRIに、しばしお付き合い下さい。

高林直澄(「KUGIRI」出展者幹事)

 

会期中の作家在廊予定

作家は、会期中交替で在廊予定です。在廊予定に変更がある場合は、facebook、twitterでお知らせします。

gallery 176の感染防止対策に関して

*ご来廊の際は、「gallery 176の感染防止対策に関して」をご一読ください。

関連イベント

ギャラリートーク

展示搬入直後のギャラリー内で、勝又さんと出展者でそれぞれの作品について、今後の活動について語っていただきます。

*ギャラリートークは無観客でYouTubeのライブ配信で行う予定です。配信のアーカイブは公開しますので、トーク終了後もご覧いただけます。

開催日時

2020年9月12日(土) 13:00〜14:00ごろ *搬入の状況にり開始時間が遅れる場合があります

出席者

勝又公仁彦(美術家/写真家・京都芸術大学准教授)、「KUGIRI」展出展者

配信先(YouTube)

https://youtu.be/cy43ewyTFqU

 

出展作家紹介

狩野明茂カルオマチコ児島貞仁児玉大輔下良隆彦高林直澄

©︎ Akidhige Kano

狩野明茂「Visions」

 

略歴

略歴: 京都造形芸術大学 美術科写真コース卒

©︎ KARUO MACHIKO

カルオマチコ「娘の母で 母の娘で」

 

ステートメント

4年程前、娘は東京での仕事が思うように出来ず体調を崩し戻って来た。それをきっかけに、娘にエールを送るつもりで撮影に連れ出した。同時期母も老いの兆しが見え始め、一人では出来ないことが増えてきた。変わりゆく母の姿を残しておきたいと撮影を始めた。母は80代、娘は20代そして私は50代それぞれの年代ならではのドラマがある。母の姿に未来が、娘の姿に過去がそして私の姿に今がある。理想の母、理想の娘にならなくていい。それぞれの今を受け止めゆっくり自分を取り戻す。

プロフィール

京都市出身
京都造形芸術大学 美術科写真コース卒業

©︎ KOJIMA SADAHITO

児島貞仁「Time of my life.」

 

ステートメント

写真は未来も過去も写さない。
シャッターを切った瞬間、僕はそこにいた。
その時の今を生きていたという事実だけがそこにある。
写真の過去はそこからはじまる。
写真が過去へ向かうのではなく、時間が写真を取り残していくのである。
毎日生きていても何か特別なことがあるわけじゃない、
何気ない日々が淡々と過ぎてゆくだけ、だけど
時を重ね、今ここにいる。
時を刻むことこそが、生きるということであり、
存在してることこそが、この上なく幸せなことなのだ。
僕自身の心と身体は時が蓄積された唯一の証でもあるのだから、
いずれ訪れる旅の終わりに、いい人生だったと言うために、
これからも限りある時を刻み続ける。写真を取り残しながら・・・。

プロフィール

小学生の頃、母親が買ってくれた126フィルムカメラで写真を撮り始め、写真コンテストで4回連続入選したことで撮ることの面白さを感じるようになる。
中学生になり当時の担任が自宅に暗室を持っているほどの無類の写真好き、写真、カメラが趣味という同級生も多く、彼らに刺激を受けて初めて一眼レフカメラ(フィルム)を購入する。
高校生になり次第に自身の進路に写真というものを考えるようになる。しかし、当時の状況や環境、何よりも自分自身の信念のなさでその進路を断念し、同時に写真も止めてしまう。
それから長い年月が経ち、人生の折返しも過ぎたであろう2011年3月、東京出張時に東日本大震災を目の当たりにしたことで人生観が変わる。
生きる意味や折返し後の人生をどう生きていくか、やり残したことは何かを考えはじめる。
その中の一つとして、初めての人生の岐路だったであろうあの頃の自分や写真とあらためて向き合ってみることを決意し、2014年4月京都造形芸術大学 美術科写真コースに入学。
6年後の2020年3月同大学を卒業。大学入学のキッカケとなったことをテーマとした「Time of my life.」を卒業制作として制作するも、コロナウイルス感染症の影響で卒業式はおろか卒業制作展も延期となる。
同年8月へ延期となった卒業式、卒業制作展であったが、卒業式はオンラインとなり、卒業制作展はさらなる延期に見舞われる。
これもまた人生と卒業制作展開催に想いを馳せながら現在に至る。

京都市出身
京都市在住

WebSite

https://kojima.me

Mail

sadahito@nullkojima.me

「Time of my life.」 Amzon Kindle版

https://amzn.to/3hO3nH2

©︎ KODAMA Daisuke

児玉大輔「存在について」

 

作品説明

 私は、次の決めた手順に従い道を歩いています。

・道に数字を割り当てる
・サイコロを振る
・出た目で進む道を決める
・その道を写真に撮る
・次の角まで歩く

どこへ行くのか目的地をサイコロに委ねる歩みです。これらの行為を100回繰り返し、サイコロの出た目、GPSの記録、重ねた写真、開始と終了の地点で見かけたものの情報を記述しています。

 道で出会った誰かに、今日はどちらまでと聞かれることがあります。さあ、どこへ行くのか私にもわかりません、と答えると怪訝な顔をされます。電車に乗るため駅へと向かい、買い物があるとお店へと向かう。普段私は、目的に沿う場所を目指して歩き移動しています。道の上に立つには目的地が必要なようです。

 自分で決めた手順に則り、目的地をサイコロに委ねる歩みを重ねていくと、たどってきた道はおぼろげになっていきます。行為の目的は失われていき、目的地へ移動する経路とみていた道は、見る、歩く対象として立ちあらわれます。自我が薄まり私がひらかれていくように感じる、そのような時の私、普段の私、それぞれの時に出会ったものたち、それらはどのような存在なのだろう。

略歴

2020 京都造形芸術大学 美術科写真コース卒業
1996 愛媛大学工学部機械工学科卒業
1972 奈良県生まれ

個展

2015 Your Stage(Gallery CLASS/奈良)
2013 untouchables(壹燈舎/大阪)

グループ展・他

2019 JUNE Untitled (ギャラリー勇斎/奈良)
2018 JUNE Untitled (ギャラリー勇斎/奈良)
2017 JUNE Untitled (ギャラリー勇斎/奈良)
2016 JUNE Untitled (ギャラリー勇斎/奈良)
2015 学園前アートウィーク2015(学園前ホールラウンジ/奈良)
2013 doors ART FAIR 2013(インペリアル・パレスホテル/ソウル/Gallery CLASS)
   PHOTO MANIA -NARA section-(Gallery CLASS/奈良)

©︎ SHIMORA Takahiko

下良隆彦「45リットル」

 

作品説明

我が家から毎週月曜日に収集される容器包装プラスチック。
これらはビニール袋に詰められて回収場所に出される。
毎回45リットルの袋が1個である。
この中に入っている物を撮影して視覚化することとした。
そこから見えてくるものは何なのであろうか。
152個のモチーフの共通点はプラマークの存在である。

略歴

兵庫県生まれ
2020 京都造形芸術大学 美術科写真コース 卒業
現在 大阪芸術大学 通信教育部芸術学部写真学科 在学中

受賞・入選歴

2020 「第45回2020JPS展」入選

©︎ TAKABAYASHI Naozumi

高林直澄「シュプール」

 

ステートメント

10歳の夏、初めて訪れた白馬。
あれから約30年、何かにつけてたどり着く場所。
訪れる度、いつも通りの街や山に安心感を抱くと同時に、
その時々で目にする光景は訪れる度に新鮮だ。
安心感と新鮮さに誘われ、また白馬へ向かう。

新たなシュプールを残しに。

略歴

1978年 大阪府東大阪市生まれ
2006年 関西大学卒業
2019年 Gallery Hommageメンバー
2020年 京都造形芸術大学 美術科写真コース卒業

展覧会

2018年6月 企画展「50人の今」(Gallery Hommage、2019年5月・2020年5月)
2018年11月 グループ展 59steps「はじまりのまじわり」(京都写真美術館 ギャラリージャパネスク)
2019年7月 個展「Lights of snow」(Gallery Hommage メインギャラリー)
2019年7月 個展「1second」(Gallery Hommage 菊の間)
2020年5月 個展「のりものがかり」(Gallery Hommage 菊の間)